Q4. GOP改善方法③ 経費を適正化する方法は?
A.経費の適正化で重要なのは、「経費を一律に削ること」ではありません。 削るべき経費と、あえてお金をかけるべき経費を見極め、限られた経費を最も効果的な場所に配分し直すことが重要です。

前回の記事では、GOP(営業総利益)改善の方法として「OTA手数料の適正化」についてご紹介しました。
今回はGOP改善方法の3つ目として、ホテル・旅館経営における「経費の適正化」について考えていきます。
「削る」だけの経費見直しが招く問題
経費を見直す際、多くの施設でまず出てくるのが、
「客室のアメニティを簡素なものに変える」
「清掃の頻度や人数を減らす」
「食材のグレードを下げる」
といった、目に見えやすい削減です。
こうした削減は、短期的には数字の上で経費を下げられます。
しかし、サービス品質や商品価値そのものを落としてしまうと、
• 口コミ評価の低下
• リピート率の低下
• 客単価の低下
につながり、結果としてGOPをかえって悪化させてしまうことがあります。
経費適正化で本当に重要なのは、「経費を減らすこと」自体ではなく、「利益につながらない経費を見直し、利益につながる経費には積極的にお金をかけること」です。
経費を「固定費」と「変動費」に分けて把握する
まず、自施設の経費が何で構成されているかを正しく把握することが出発点です。
経費は大きく、
• 固定費(地代家賃、リース料、保守費、システム利用料、保険料など、稼働に関わらず発生する費用)
• 変動費(食材原価、消耗品費、水道光熱費、外部委託費など、稼働・売上に応じて増減する費用)
に分けられます。
繁忙期は変動費の管理、閑散期は固定費の負担軽減というように、時期によって着目すべき経費は変わります。
この2つを分けずに「経費全体」として一律に扱ってしまうと、削減すべきポイントを見誤りやすくなります。
「削るべき経費」と「かけるべき経費」を分ける
経費適正化における最も重要な視点は、その経費が売上や顧客満足につながっているかどうかです。
例えば、
• 客室の寝具やアメニティへの投資
• 予約が完結しやすい公式サイトへの投資
• 従業員教育や定着のための費用
• 省エネ設備や予約管理システムなど、中長期的にコストを下げる設備投資
などは、短期的には経費が増えても、中長期的にはGOP改善につながる「かけるべき経費」です。
例えば、客室の寝具を数万円ランクの高いものに入れ替えた結果、快適さが口コミで評価され、稼働率や客単価が上がれば、投資額は数ヶ月〜数年で回収できることもあります。
逆に、寝具の入れ替えを先送りしてクリーニング費だけを抑えても、商品力そのものは向上しません。
「経費を減らすこと」と「利益を増やすこと」は必ずしも同じ方向を向くとは限らない、という視点を持つことが大切です。
一方で、
• 利用実態のないサービスやツールの契約
• 何年も見直されていない外注契約・保守契約
• 重複している保険や契約
• 効果検証されないまま続けている販促費
などは、削減してもサービス品質に影響しにくい「見直すべき経費」である可能性が高いといえます。
すべての経費を同じ基準で「削減対象」とするのではなく、この2つを分けて管理することが、品質を保ちながら経費を適正化するポイントです。
契約内容は定期的に見直す
経費の中には、契約時の条件のまま数年間見直されずに継続しているものが少なくありません。
リース契約(厨房機器・什器など)、保守契約、清掃や警備などの外部委託契約、保険、通信費などは代表的な例です。
こうした契約は、
• 現在の稼働状況や施設規模に対して内容が過剰でないか
• 同業他社と比べて料金が適正か
• 複数社から見積もりを取り直せる余地はないか
を定期的に確認するだけで、サービス品質を落とさずにコストを見直せる場合があります。
小規模施設こそ「外注」を戦略的に活用する
特に30室以下の小規模な旅館・ホテルでは、限られた人員ですべての業務を自社で担おうとすると、かえって非効率になり、結果的に人件費や機会損失というかたちで経費がかさんでいるケースが見られます。
例えば、
• 経理・労務・給与計算などのバックオフィス業務
• 予約サイトの運用やプランの企画
• 公式サイトの更新やSNS運用
• 清掃やリネン管理
• 送迎業務
などは、専門の外部会社に委託することで、
• 専任担当者を雇用するより低いコストで専門ノウハウを活用できる
• 経営者や現場スタッフが接客やおもてなしなど付加価値の高い業務に集中できる
• 繁忙期・閑散期に応じて委託量を調整できる
といったメリットが得られる場合があります。
大規模チェーンホテルでは、専門部署を社内に持ち、ノウハウを蓄積すること自体が競争力になります。
一方、小規模な独立系旅館・ホテルでは、「すべてを自社で行うこと」が必ずしも効率的とは限りません。
自社が力を入れるべき業務と、外注した方が費用対効果の高い業務を切り分けることが、経費適正化の重要なポイントになります。
例えば、経理担当を専任で1名雇用する場合、給与や社会保険料を含めると年間で数百万円規模の固定費が発生します。
これを記帳代行や税理士事務所への外注に切り替えれば、繁閑にかかわらず一定の費用で専門知識を活用でき、経営者自身が本来集中すべき集客や商品企画に時間を使えるようになります。
このように、外注は単なる「コスト削減策」ではなく、限られた経営資源を最も付加価値の高い業務に振り向けるための手段として捉えることが重要です。
同規模施設とのベンチマークを活用する
自施設の経費が適正かどうかは、自施設の過去実績だけと比較していても判断しにくいものです。
売上高に対する経費科目ごとの比率を、同規模・同業態の施設の水準と比較することで、
「削減の余地がある経費」
「すでに適正な水準にある経費」
を客観的に見極めやすくなります。
当社の経費適正化・収益改善支援について
当社(ホスピタリティマネジメント株式会社)では、20年以上にわたるホテル・旅館の経営改善支援の経験を活かし、単に「経費を削減しましょう」とご提案するのではなく、収益構造全体を分析したうえで改善策をご提案しています。
科目別の経費分析、同規模施設とのベンチマーク比較、契約内容の見直し、施設規模に応じた自社対応と外注の切り分けなど、施設ごとの状況に合わせて総合的にご提案いたします。
経費は「削れば削るほど利益が増える」というものではありません。
品質を保ちながら不要な経費を見極め、必要な経費には積極的に投資していくことが、中長期的なGOP改善につながります。
「経費を見直しているつもりだが利益が残らない」「どこまで外注してよいか分からない」とお悩みの施設様も、ぜひお気軽にご相談ください。
次回は、「GOP改善方法④ 客単価を上げる、ホスピタリティマネジメントは?」です。