Q5. GOP改善方法④ 客単価を上げる、ホスピタリティマネジメントは?
A.客単価を上げるうえで重要なのは、「値上げをすること」ではありません。
お客様が納得して高い金額を支払いたくなる商品価値をつくること、そして日々変動する需要に合わせて適切な価格で販売する仕組みを持つことです。

前回の記事では、GOP(営業総利益)改善の方法として「経費の適正化」についてご紹介しました。 今回はGOP改善方法の4つ目として、「客単価を上げる方法」について、ハード面の投資、在庫の見せ方、価格戦略という3つの視点から考えていきます。
客室のリニューアルで「選ばれる理由」をつくる
客単価を上げる分かりやすい方法のひとつが、客室のハード面への投資です。
特に効果が出やすいのが、露天風呂付客室へのリニューアルです。
例えば、標準客室が1泊2万円台の旅館であっても、露天風呂付客室にリニューアルすることで、同じ広さ・同じ立地でも1泊数万円単位の上乗せが可能になるケースは珍しくありません。
「お部屋でゆっくり温泉に入りたい」「記念日として特別な部屋を選びたい」といった需要に応えられるため、価格に対する納得感が生まれやすいのが特徴です。
例えば、20室のうち5室を露天風呂付客室に改装し、1泊あたりの単価を1万円引き上げられたとします。
その5室が年間を通じて7割程度稼働すれば、それだけで年間1,000万円以上の売上増加につながる計算になります。
「なんとなく良さそうだから改装する」のではなく、客単価の上昇幅と稼働見込みから投資対効果を数字で確認したうえで判断することが重要です。 もちろん、客室のリニューアルだけで満室になるわけではありません。宿全体の雰囲気やサービスの質が伴って初めて、投資した客室の価値がお客様にしっかり伝わることも、忘れてはならないポイントです。
予約可能期間を1年先まで広げ、「探し始めた瞬間」に見つけてもらう
ハード面の投資と同じくらい重要でありながら見落とされがちなのが、「客室在庫をどこまで先の日程まで公開しているか」です。
お客様の多くは、旅行日程が固まるかなり前の段階から宿泊先を探し始めます。
記念日や連休、家族旅行などに向けて、数ヶ月〜1年近く前から情報収集を始めるお客様も少なくありません。
このとき、自施設の空室検索が3ヶ月先までしか開放されていなければ、それより先の日程を検討しているお客様の比較対象にすら入ることができません。
存在を知ってもらう機会そのものを、自ら手放してしまっていることになります。
そこで重要になるのが、客室在庫を1年程度先まで開放しておくことです。
• お客様が探し始めた早い段階で、自施設を選択肢として認識してもらえる
• 比較検討の土台に乗ることで、早期予約向けのお得な価格を提示できる
• 需要の読みにくい遠い日程からも、着実に予約を積み上げられる
在庫を早くから開放しておくことは、単に「予約の間口を広げる」以上の意味があります。
これは、次にご紹介するイールドマネジメントの起点となる「早期の安い価格帯で予約を確保する」という戦略そのものを成立させるための土台になるのです。
例えば、結婚記念日の旅行を考えているお客様が、1年前から候補を探し始めたとします。
このとき自施設の予約が開いていなければ、そのお客様は最初から比較検討の対象から自施設を外し、他の予約可能な施設で日程を決めてしまいます。
半年後、あらためて自施設の予約が開いた頃には、すでに他施設で予約済みという機会損失が起きているのです。 在庫を早期から開放することは、こうした「見えない機会損失」を防ぎ、早期予約という最も母数の大きい需要を取りこぼさないための第一歩になります。
イールドマネジメントという考え方
ホテル経営の基本となる考え方に「イールドマネジメント」があります。
需要と供給のバランスに応じて価格をリアルタイムに調整し、収益を最大化する手法で、航空業界や大手ホテルチェーンでは古くから活用されていますが、考え方自体は小規模な旅館・ホテルにも十分応用できます。
基本的な考え方は次の通りです。
• 予約が入りにくい時期・遠い日程は、比較的低い価格で早めの予約を促す
• 予約が順調に埋まり、稼働率が100%に近づいてきた日程は、価格を上げて販売する
• 満室に近づくほど、残りの客室は早期予約より高い価格で売り切る
早期予約のお客様は、旅行日程が読みにくい中でリスクを取って予約してくださっている存在です。
そうしたお客様に相応の価格メリットを提供し、逆に直前まで席が残っている需要の高い日程は価格を上げて利益を確保する。
この一貫した設計こそが、イールドマネジメントの本質です。 そしてこの設計は、先ほどの「1年先まで在庫を開放する」という土台があって初めて機能します。
「直前割」が客単価を下げてしまう理由
一方で近年、多くの施設で見られるのが、「直前割」のように宿泊日が近づくほど価格が下がっていく販売方法です。
直前まで空室を埋める手段としては有効に見えますが、多用すると、
• 早くから予約してくださったお客様の方が、結果的に高い金額を支払うことになる
• 「直前に予約した方がお得」という学習効果が生まれ、お客様が予約を先延ばしにするようになる
• 本来価格を上げて売り切るべき直前の時期にも、価格を下げてしまう
といった問題が生じます。
例えば、3ヶ月前に2万5,000円で予約したお客様がいる一方で、同じ部屋タイプが直前割で2万円まで下がっていれば、施設への信頼や満足度にも影響しかねません。
「早く予約するとお得」という一貫した価格ルールを保つことは、収益面だけでなく、お客様との信頼関係を維持するうえでも重要です。
直前割は、閑散期など限定的な場面での例外的な販促策にとどめるのが望ましいでしょう。
小規模施設でも始められる実践
大規模チェーンホテルでは、専用のレベニューマネジメントシステムで需要予測に基づき自動的に価格を調整しています。
一方、30室以下の小規模な旅館・ホテルであっても、
• OTAや自社予約システムで、まずは在庫の公開期間を1年先まで広げる
• 曜日・季節ごとの過去の予約実績を分析し、日程ごとに数段階の価格帯を設定する
• 稼働率が一定水準を超えた時点で、残室の価格を引き上げるルールを決めておく
といった、シンプルな運用から始めることができます。
高価なシステムがなくても、OTAの管理画面や予約台帳をもとに定期的に見直すだけで、客単価改善の効果は十分に見込めます。
当社の客単価改善・収益改善支援について
当社(ホスピタリティマネジメント株式会社)では、20年以上にわたるホテル・旅館の経営改善支援の経験を活かし、客室のリニューアル計画から、在庫公開の設計、日々の価格設定・イールドマネジメントの仕組みづくりまで、施設の規模や状況に合わせてご提案しています。
「客室改装を検討しているが、投資対効果が分からない」「直前割に頼らない価格設計をしたい」とお悩みの施設様も、ぜひお気軽にご相談ください。
次回は、「GOP改善方法⑤ インバウンドを取り込む方法は?」です。