【運営面からみた収益改善(バリューアップ)メソッド】②

2021年以降は、「優勝劣敗」

優勝劣敗とは、「生存競争では境遇に適したものが生き残り、境遇に順応できない者が滅びる」という意味、まさに2021~2022年は宿泊業界にとっては優勝劣敗が明らかになる年である。

2013~2019年まではインバウンドの増加をうけ、新規開業ラッシュにより客室数の供給が急増したが、コロナ感染症の影響で一気に需要が消失し、全国ほぼすべての宿泊施設が危機的経営状況に陥ってしまった。

雇用調整助成金やGOTOキャンペーンなど各種助成制度や支援制度はあるものの、それらが終了後の反動が大きく影響し、その段階で金融機関の支援を得られず、資金ショートしてしまえば、まさに経営破綻という厳しい現実に直面することになる。

いま必要なことは需要回復期における利益率の改善のための準備をする、ということである。

じっと我慢して耐えているということでは、感染症収束後も間違いなく負け組ということになってしまう。

一方では雇用の確保ということも重要になってくる。

たしかに現状は想像を絶する厳しい経営環境(財務状況)ではあるが、需要回復期における人手不足はいまから予想できることである。

2019年までは人手不足が業界の大きな課題でもあったことを考えると、人員整理やリストラなども慎重に行う必要がある。

しかし資金繰りで待ったなしの状況に追い込まれているホテルでは、いまを乗り越えるために人員整理もやむなしだが、同時に施設規模の縮小や不採算部門からの撤退、または営業スタイル自体の変更なども考えるべきである。

いまは雇用調整助成金等を最大限に活用し、ギリギリまで雇用を守るという基本姿勢をもっていただきたい。

【運営面からみた収益改善(バリューアップ)メソッド】①

新型コロナウイルス感染症で大きなダメージを受けた宿泊業界では2021年以降、経営破綻・譲渡・リブランド・運営会社変更など続出することが予想される。

2019年までは運営面における経営悪化の原因や対応策などは、事業デューデリジェンス(事業評価および分析)などを実施することで、ある程度は改善のための方向性などを示すことができた。

しかしいま我々が直面している状況は、内的要因や経済不況などによる落ち込みではなく、世界規模の感染症という未知の領域であり、その打開策に関しては、今までのやり方だけでは通用しない。

いま我々に求められていることはホテルの役割や価値観が変わったということを認識し、2021年はもとより2022年以降を見据えた事業構造の転換、収益構造の変革、生産性の向上、などホテル事業の在り方そのものの改革が必要とされている。

ここではコロナウイルス感染症で受けたダメージから脱却し、運営面から見た経営の健全化、更にはバリューアップするにはどのような方法や考え方があるのか、等の考察を行うこととする。

「運営面から見た現状と今後の方向性」

ホテル業界再編成時代&今後の展望

2020~2021は新型コロナウイルス感染症に翻弄され、宿泊業界では生き残りをかけ様々な対応を迫られているが、資金繰りの悪化から事業継続を断念するホテルも多数でてくるはずである。

その結果として運営会社の変更や事業譲渡または廃業・倒産など様々な形で業界の再編成がおこなわれる。それは大手のホテル会社においても予断を許さない状況である。

またひとくくりにホテルと言ってもカテゴリーによって、そのダメージの大きさは違ってくる。

フルサービスホテルでは宴会需要が消滅したことを受け、ダメージの大きさは宿泊主体型ホテルとは比較できないくらいの規模となっている。

また有名観光地の小型高品質な旅館とインバウンドの構成比率が多い都市部のホテルでも大きく違ってくる。

このような状況下でホテル運営を継続していくために重要なことは、資金繰りはもとより、収支構造の見直し(収益力のアップ)ということになる。

言い換えれば損益分岐点をいかにして下げることができるか、ということである。

運営手法の見直しや組織の見直しまたは業態変更などで損益分岐点を下げることができれば、2021年下期以降にワクチン接種が普及し、観光需要が徐々に回復してくれば、コロナ禍で受けたダメージを補うことも可能なはずである。

そのためにはハードウエア(設備や機能)、ソフトウエア(組織、仕組、役割、手法)、ヒューマンウエア(人材育成、スキル、知識、生産性)など、事業の在り方自体の見直しが必要となる。